レスリング女子で五輪3連覇を達成した吉田沙保里(36)が現役引退を決めた。圧倒的な強さで3度目の金メダルを獲得したロンドン五輪以降を担当した記者としては、力の陰りを自覚しながら、それにあらがうように戦う理由を探していた姿が印象に残る。「霊長類最強女子」と称され、レスリング界の、日本の女子アスリートの象徴として誰よりも強く明るく振る舞ってきた吉田。やっと、戦いのマットを降りられる。
レスリング吉田沙保里が引退を表明 五輪3連覇を達成
「沙保里へ。長い間、本当にお疲れ様」 澤穂希さん
化粧水もらい戻った覇気
忘れられない光景がある。2014年3月14日。61歳で急死した吉田の父でコーチの栄勝さんの告別式が津市で営まれた。「大好きだよ」と号泣する吉田の背中を家族がさすっていた。式が終わりにさしかかると、吉田は最寄りの近鉄線の駅へ。2日後に迫る女子ワールドカップ出場のため東京へ向かったのだ。
駅に着くと、吉田は旧知の女性記者に「顔、くしゃくしゃだよ」と化粧水をもらった。
それを顔に塗り込むと、吉田の…