米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事で、沖縄防衛局発注の海上警備を委託された警備会社が、計画に抗議する市民らをリスト化していたことがわかった。約60人分の顔写真や氏名、経歴をまとめ、警備艇に備えていた。岩屋毅防衛相は29日の閣議後会見で「適切ではない」と述べた上で、「(リスト作成を業者に)指示した事実はない」と防衛省の関与を否定した。
本土との溝、基地問題の行方は…沖縄はいま
警備会社は「ライジングサンセキュリティーサービス」(東京都渋谷区)。2014~17年に海上警備を担当していた。
ライジング社は、朝日新聞の取材にリストの作成を認め、「インターネットや新聞報道などを元に作った。誰がどういう行動をとるか把握し、安全に警備するためだった」と語った。すでに回収・廃棄したという。
リストについては、16年に沖縄タイムスが報道。その後、政府は「写真撮影やリスト作成、個人情報の収集、報告を政府として指示した事実はない」とする答弁書を閣議決定した。
これに対し、毎日新聞が今月、ライジング社の内部文書に「沖縄防衛局調達部次長から作成を依頼された」という趣旨の記述があると報道。市民の情報公開請求を受けて、防衛局が同社に、警備報告書から抗議船の船長の名前などを削って出し直すように依頼した疑いがあると報じた。
岩屋防衛相は、当時の調達部次長本人に確認したとして、「指示した事実はないし、リストも持っていない」と否定。報告書の書き換えについては調査する考えを示した。
ライジング社は、リスト作成は「沖縄防衛局の指示ではなく、独自の判断。リストを防衛局側に提出したことはない」としている。内部文書については「そういう文書はない」と否定した。(古城博隆、清宮涼)