中国の春節(旧正月)休みが4日始まった。10日までの期間中、前年より50万人(7・7%)多い延べ約700万人の中国人が国外に出る見通しで、日本は人気の渡航先だ。ただ、中国の景気後退で訪日客の消費に陰りが見えており、小売業界は知恵を絞る。
名古屋三越栄店には4日夕、免税手続きをするカウンターに訪日客が次々と訪れた。中国人客らが増え、昨秋、広さを16倍の約70平方メートルに広げたところだ。
日本政府観光局によると昨年、日本を訪れた中国人は延べ838万人で過去最高を更新した。中国メディアが伝えた中国のオンライン旅行大手、携程旅行網(シートリップ)によると、春節休みで最も人気のある渡航先はタイで、日本は2位。今年1月には中国人への訪日ビザの発給要件が緩和された。
一方で、対米摩擦の影響もあって中国では景気が減速しており、訪日消費にも影を落とす。日本の大手百貨店の1月の免税品売上高は前年同月を軒並み下回った。昨年末から、訪日中国人が中国に持ち帰れる買い物の上限が厳格に運用されるようになったことも響いたようだ。
逆風をはね返そうと、各社は工夫する。
名古屋三越栄店は春節を前に、中国のSNSで影響力を持つ「インフルエンサー」の若い女性を招いた。売り場で化粧品を使う様子を撮影。その動画をインフルエンサーが中国のSNSで紹介し、視聴回数は200万回を超えた。店側には、化粧品の売り上げ増につなげるねらいがある。
松坂屋名古屋店は、中国で普及する電子決済「アリペイ」で買い物した客に、少額を還元。化粧品の試供品が当たるイベントも開く。広報担当者は「爆買いも落ち着き、他社との差別化をはかりたい」と話す。
免税店大手のラオックスは、「超絶限定祭」と題したイベントを開催中だ。英国アニメの子ブタのキャラクター「ペッパピッグ」が中国ではやっていることから、ペッパピッグの日本限定商品を用意。美容機器など中国人に人気の商品を13日まで最大6割引きで販売中だ。
「コト消費」にも力が入る。プリンスホテルは中国語専門のスキー教室を長野県軽井沢町で始めた。2時間で2万4千円。雪景色を楽しみたい家族連れらに人気で、1日数十人単位の申し込みがあるという。「春節の期間中はさらに申し込みが増えるのでは」と担当者は期待する。(高橋末菜、斉藤明美、広州=益満雄一郎)