「#MeToo(ミートゥー)」など女性の権利擁護に世界的な関心が高まる中、「不遇の女性科学者」として知られる英国の故ロザリンド・フランクリン氏(1920~58)の名前が欧州宇宙機関(ESA)の火星探査車に冠されることになった。探査車は2021年に着陸し、生命の痕跡などを探る予定だ。
フランクリン氏は、62年のノーベル医学生理学賞の対象となった「DNAの二重らせん構造の発見」で重要な役割を担ったが、37歳で早世し受賞を逃した。生前も死後も、男性の同僚たちに比べて正当に評価されなかったとされ、今回の命名は業績の顕彰になるともいえる。
発表した英国のスキッドモア・大学・科学・研究・イノベーション担当相は、「彼女がキャリアにおいて多くの障害を乗り越えたように、『探査車ロザリンド』が成功裏にこの刺激的な冒険をやり抜くことを望む」と述べた。
英宇宙局の女性幹部も、「彼女がDNAの研究を通じて地球上でしたように、彼女の名を冠したロボットが火星上で生命の構成要素を探すということはぴったりだ」と称賛した。
英BBCによると、遺族は「60年以上後に名前を冠した探査車が火星に送られるなんて、彼女は夢にも思わなかったでしょう。でもこれで、この計画をより特別なものにしてくれるでしょう」と歓迎したという。(松尾一郎)