(26日、選抜高校野球 広陵2―0八戸学院光星)
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試合開始から4球目。広陵・河野(かわの)の直球が、空振りを誘う。「150km/h」。電光掲示板に「出したい」と思っていた自己最速が表示された。
この球で三振に倒れた八戸学院光星の1番伊藤は、「勢いのある球を見て、自分たちもイケイケどんどん、振りにいこうと思った」。強打は、チームカラー。試合前に決めた直球狙いへの確信を深めた。
河野の最速はこれまで148キロ。2キロ更新し、さらに欲が出そうなものだが「初回に出て、ほっとしました。ずっと狙っていたら、力むので」。目標を果たし、かえって冷静になれた。二回以降、球速を140キロ前後に抑え、制球重視に。捕手の鉤流(つりゅう)は、「直球を印象づけられたので、チェンジアップが有効に使える」と変化球を増やした。
光星は的が絞れない。中盤以降、変化球狙いに方針を変えたが、歯車は狂ったままだった。2点を追う八回、2死二、三塁。注目の左打者の一人、3番武岡。2球続けて外角球に空振り、4球目の内角球に詰まって遊飛に。全て直球なのに、気持ちよくバットを振れない。「修正が間に合わなかった」と悔やんだ。
春夏の甲子園初戦で10連勝中だった光星。高い分析力で初戦までに攻略法を見つけるのがうまい相手を、河野は被安打3で完封した。隣のインタビュー台にいた中井監督は笑って言った。「スピードガンコンテストみたいなことして、150キロが出たから安心したんでしょう」。そのたった1球が、試合の行方を決めた。(小俣勇貴)