コラム(編集委員・安藤嘉浩)
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新世紀の第一歩を踏み出すに当たり、大会誕生時から大切にしてきた精神を再確認する作業が続いている。
第101回を迎えた全国高校野球選手権大会は22日、沖縄と北海道から地方大会がスタートした。その約2週間前、日本高校野球連盟の審判規則委員会が各都道府県高野連を通じて、全国の加盟校に「周知徹底事項の再徹底について」という通達を出した。
今春の選抜大会で、二塁走者が捕手のサインを盗み見てジェスチャーなどで打者に伝えていると疑われる行為があった。通達は「未(いま)だにこのような実態が散見されるのは誠に残念でなりません」などとした上で、「高校野球に関わる者すべてが強く意識し根絶できるようご指導願います」と締めくくっている。
球種の伝達は、日本高野連が毎年更新する「周知徹底事項」の「マナーの向上」で禁じている。疑いがあるときは審判委員が注意を与え、すぐにやめさせるとある。
きちんとルール化して、罰則も設けた方がいいという声もあるが、日本高野連の窪田哲之・審判規則委員長は「高校野球が大切にしてきたフェアプレーの問題。罰則で縛るのではなく、スポーツマンとして、みんなで意識して撲滅したい」と語る。
大会誕生の4年前(1911=明治44年)、東京朝日新聞が「野球と其害毒」と題した記事を連載した。新渡戸稲造・旧制一高(東大の前身の一つ)校長は野球を「悪く言えば巾着切(スリ)の遊戯、対手を常にペテンに掛けよう……」などと批判している。
その意見への賛否はともかく、勝つためには何をしてもいいという風潮が芽生えていたのは事実のようだ。
そんな背景もあって全国中等学校優勝野球大会(選手権大会の前身)は襟を正して野球に取り組むよう、第1回から試合前後のあいさつなどを採り入れた。ルールを守って、正々堂々と野球をしよう――。高校野球はフェアプレー精神を大切にして、100回の歴史を重ねてきた。
19日にあった埼玉大会の組み合わせ抽選会。県高野連の小山友清・専務理事がフェアプレー精神を参加校に説明し、宮川浩之・審判部長が「実力だけでなく、マナーも素晴らしいチームを(甲子園に)送りたいのは各チーム同じ思いのはず」と呼びかけた。
新世紀の夏も、全国でフェアプレーをたくさん見たい。(編集委員・安藤嘉浩)