（９日、高校野球東東京大会 城西３―２立教池袋）

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１点を追う三回裏１死一塁。反撃の場面で打席に立教池袋の主将藤本倫（３年）が立った。４球目をフルスイングすると、打球は右中間を破り、一塁走者が生還。自身も果敢に三塁を陥れた。ベンチもわいた。

野球を最初に教えてくれたのは父だった。その父が責任教師を務めるチームに入った。「立教の縦じまのユニホームに憧れた」。しかし、練習で態度が主将らしくなかった時は帰宅してから叱られた。口をきかない期間もあった。

このチームは、昨秋も今春も都大会の１次予選で敗れ、公式戦未勝利。「雰囲気がいい時は試合や練習も盛り上がるが、悪いと引っ張ってしまう」。主将としてどうムードを変えたらいいのか悩んだ。

春に左手首を痛めて練習試合に出られなかった。古賀賢之監督のそばに座ると、それまで気づかなかったつぶやきが聞こえた。相手選手のどこを見ればいいのか、試合に臨む心構えはどうすればいいのか。監督の言葉をグラウンドやベンチの選手に伝えた。仲間も反応してくれ、次第にまとまっていった。

今大会の初戦で対戦した城西は、昨年の秋季都大会で延長十一回の末、１点差で負けた相手だ。「あの時のチームとは違う。変わった姿を見せてリベンジする」と心に誓っていた。三回に自身の三塁打を含む大門駿（３年）、古沢祐来（同）の３連続安打で一時リードしたものの、五回に逆転されて、１点差で涙をのんだ。

試合中、藤本が打てば「いいぞ、キャプテン」と、失策すれば「どうした」と仲間から声が飛んだ。三塁打を打った後、ベンチに戻ると父がハイタッチしてきた。試合が終わると、「よくやった」と父が頭に手を置いた。

「勝利をめざして最後まで努力するチームで、互いを思いやれるメンバーだった」。そう語る藤本の目から大粒の涙がこぼれた。＝神宮第二（山田知英）