第91回選抜高校野球大会の準決勝が2日にあり、明石商は東邦(愛知)に4―2で敗れた。初の4強入りという快進撃を演じた明石商だが、目標の「日本一」とはならなかった。「よくやった」「お疲れさん」。甲子園には健闘をたたえる拍手がやまなかった。
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熱投493球と意地の1本
「ストライクがほしい」。七回裏、明石商のエース中森俊介君(2年)は少し焦っていた。緊迫の投手戦が続き、0―0の均衡が崩れない。そんな中で四死球を与えてしまい、2死一、二塁の危機を迎えた。力を込めて投じた直球が高めに浮いた。「しまった」。3点本塁打を浴びた。
球速は別格だ。中学3年時で140キロを超え、昨夏の甲子園では1年生ながら145キロを計測。冬場は毎日、腹筋300回と背筋200回をこなして体幹を鍛え、体重も昨夏から5キロ増やして83キロに。球威とキレを増した投球で今大会の明石商快進撃を支えてきた。
1回戦から準々決勝までの3試合全てに登板し、うち2試合で完投。だが、連投で次第に球威が落ちてきていた。気持ちの動揺もマイナスに働いた。中森君はマウンド上で唇をかんだ。
だが、その中森君を再び奮い立たせたのが、直後の八回、1点差に詰め寄る右中間への本塁打を放った4番の安藤碧君(3年)だ。
昨秋の近畿大会以降、プロ野球選手のフォームを動画で見て、打撃を研究。巨人・丸佳浩選手を参考にしてフォーム改良に取り組んできた。今大会の打率は低めだったが、「チームを何としても勢いづけたい」と強く念じて打席に入った。
その願い通りの一打だった。見守っていた中森君も腕を突き上げ、「まだ終わっていない。全力でやるぞ」と心の中で叫んだ。
しかし、その後の反撃はたたれ、決勝進出の夢はついえた。それでも、選手たちはすぐに前を向いた。安藤君は「最後の夏にまた甲子園に出たいという気持ちが強くなった。夏こそ全国制覇したい」。今大会の4試合で計493球を投げた中森君は自分に言い聞かせるように繰り返した。「この大会で終わりではない」(森直由)