光すらのみ込んでしまう巨大ブラックホールの撮影に、日米欧などの国際研究チームが初めて成功した。これまで謎だった姿を詳しく調べることによって、銀河の成り立ちの解明にもつながると期待される。今回の撮影で分かったことや、今後のねらいをまとめた。
明るく輝くドーナツ状の光に囲まれた黒い穴――。
画像を前に、研究チームの代表の米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのシェパード・ドールマン教授は「技術革新と世界中の最高の望遠鏡をつなぎ合わせ、1世代前なら不可能だったことを成し遂げた」と胸を張った。
国際研究チームが、2年かけて撮影に成功したのは、地球から約5500万光年離れた銀河「M87」にあるブラックホール。今回、大きさや質量が判明した。
ブラックホールの重力によって空間がゆがみ、遠くの光が曲がる「重力レンズ効果」を補正して計算したM87ブラックホールの半径は、約200億キロ。ほぼ太陽系のサイズに匹敵する。
周辺の明るい輪は、ブラックホールの重力に捉えられたガスが、周囲を高速で回り続け、60億度以上の超高温プラズマになったものだ。この光の幅は1千億キロで、光の速さで4日間かかる距離だ。光の輪の大きさをもとに計算したところ、ブラックホールの重さは太陽の65億倍だった。予想されていたのは35億倍か、62倍のいずれかだった。
撮影できた光の輪は下側が明るかった。アインシュタインの一般相対性理論では、ほぼ光速で光源が移動すると、進行方向に強い光が発せられるとされる。
研究チームの日本代表を務める国立天文台の本間希樹教授は「プラズマのガスがブラックホールと同じ方向に回転している可能性が高い」と説明。ブラックホールは下側が地球の方向に向かう向きに自転している可能性があるという。
また、撮影されたブラックホールの形はほぼ「真円」だった。いびつな形をしていれば、アインシュタインの一般相対性理論の予言と矛盾する可能性があったが、実際のずれは10%以下だった。本間さんは「残念ながら一般相対性理論にほころびがなさそうだ」と苦笑交じりに話した。
今後、チームの研究ポイントは…