夏の高校野球シーズンが始まっている。応援するチームが勝ち上がると盛り上がる一方で、気がかりなのが、投球過多による投手の故障だ。今年、新潟県高校野球連盟が独自に球数制限導入を検討したことをきっかけに議論が活発化している。秋田県内の現場では、どう受けとめられているのか。
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朝日新聞秋田総局は5月、県内の硬式野球部の監督46人を対象に、球数制限の賛否を問うアンケートを実施。6人を除く計40人から回答を得た。
アンケートでは、試合で投球数制限を導入することに対する賛否を尋ねた上で、自由記入欄を設けた。その結果、「反対」「どちらかといえば反対」が全体の65%を占め、「賛成」「どちらかといえば賛成」の15%を大きく上回った。
「けが予防のためには必要」などの理由から、「賛成」とする意見が一定数あった。ほかに、「連投の回避を考えると、積極的に採り入れるべきだ」との回答もあった。
一方、反対意見の中で目立ったのが「部員数が少ない学校は圧倒的に不利」「部員が少なければ(中学まで)投手経験がない選手ばかりということもあり得る。2人目、3人目(の投手)を育てる時間が足りない」といった、少子化に悩む秋田の切実な声だった。
また、「試合前の練習の球数や、牽制(けんせい)球、バント処理などの送球は投球数にカウントされていない」として、「試合中の投球数だけを管理しても効果は限定的では」との指摘が複数あった。さらに、「高校生たちが(制限に)否定的な意見を持っている」「高校が野球人生の集大成という選手の方が多い」などと、球数を一律に制限することへの疑問も上がった。
球数制限をめぐっては、新潟県高野連が今春の同県大会で1試合100球の制限を独自に導入しようとしたことをきっかけに、議論が本格化。日本高野連が設けた有識者会議は6月、1試合ごとではなく、大会終盤など一定期間での総投球数に制限をかける方向性を示した。具体的な制限の内容は今後検討される。
秋田高元監督で、秋田県高校野球連盟会長も務めた小野巧さん(64)は前提として「投手の将来性はもちろん守らなければならない」と強調。その上で「投手の年齢やレベルによって、投げられる球数は違うので、一律に球数を制限することは難しい」と分析する。具体的な提案として「連投を防ぐために球数制限よりも先に大会日程の見直しに着手すべきではないか」と語った。
県高野連の久米信彦理事長は「練習や練習試合で無理をしてけがをする選手も多いと感じている。球数を制限する前に、大会日程の変更の検討や正しい投球動作の指導をするべきではないかと思う」と話した。(野城千穂)