(16日、高校野球秋田大会 角館8―5金足農)
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動と静。あの吉田輝星(こうせい)投手(日本ハム)のマウンドさばきが「動」ならば、金足農の山形琉唯(るい)投手は「静」だろう。1年生とは思えない落ち着きぶりで、打たれても表情は変えず、がまんの投球を続けた。角館戦で初めて先発し、13イニングを投げきった。
甲子園での吉田投手の熱投にあこがれて、大仙市の中仙中学校から入学したばかり。173センチと小柄だが、同じ右腕の先輩とは「負けん気」が共通する。「低めに強い球を投げる。打たせて取って、チームを勢いづける」。そう言い聞かせて、口を「へ」の字にして投げ続けた。
毎回のように走者を背負いながらも、思い切りのいい直球と鋭いスライダーで勝負した。気迫を見せたのは十二回。2死一、三塁で強打の4番打者を迎えたが、逃げない。最後は低めに力いっぱいの球を決めて、一ゴロに打ち取った。
しかし、十三回に力尽きた。球が高めに入り、2四球のあと、2死満塁から左越えに走者一掃の安打を浴び、4失点。「浮いた球で3年生の夏を終わらせてしまった。この悔しさを忘れずに、来年につないでいきたい」と涙をのんだ。
試合の前日、昨夏のOBたちが練習場を訪れて激励した。吉田投手からは「目の前の試合を勝ち抜け。そうすれば甲子園が見えてくる」とのメッセージが寄せられた。
背番号は「20」。吉田投手が1年生でつけた番号と同じ数字で、将来性を期待されている証拠だ。来夏に向けて「吉田さんのようになりたい」と雪辱を誓った。「輝星2世」――。そう呼びたくなるような新星が、金足農に誕生した。(渡部耕平)