(16日、高校野球秋田大会 由利7-4横手)
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1点を追う九回。打席に立った由利の阿部日向人(ひなと)選手(3年)に焦りはなかった。記憶にあったのは、2回戦の秋田修英戦。3点差を六回でひっくり返した感覚を、忘れていなかった。
「初球でいこう」。攻めの姿勢を貫くと決めた。内角へ変化球が来た瞬間、フルスイングした。右前へ伸びた打球は相手の悪送球を誘い、味方が2人かえる。「よっしゃ!」。うれしさがこみ上げ、拳を突き上げた。
春の県大会前、練習試合での死球で右足を痛めてから、打撃のフォームを見失った。スイングしようとしても腕が詰まってしまう。見かねた父が、帰宅後練習につきあってくれた。父は西目高の元三塁手。「上からたたきすぎずに、長打を打つイメージで」。助言を意識し、この試合でも飛球を怖がらずに振り切った。
チームはその後、本塁と二塁の重盗などで勢いに乗り、さらに2点を追加。逆転勝利が決まった瞬間、ベンチを飛び出しグラウンドへかけだした。あっという間の最終回だった。「次は全打席ヒットで打ち勝ちたい」。強気の笑顔で球場をあとにした。(高橋杏璃)