(10日 高校野球京都大会 海洋5-4南陽)
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海洋は21年ぶりの夏2勝目をあげた。
1点を追う六回裏、海洋は2死一、二塁の好機を迎えた。4番打者で投手の田中純也君が打席へ。4球目を振り抜くと、打球は右翼線に落ちた。処理に手間取る間に一塁走者もかえって逆転した。
自らも一気に三塁を踏んだ。右手を高く突き上げた。いつもはしないガッツポーズが自然に出た。ベンチから「ナイスバッティング!」の声がとんだ。
六回表、再三好守に助けられたが、1点を先取された。失点を取り返す一打に笑みがこぼれた。
夏は3回目の出場。1年のときも先発し、八回まで投げて1失点。チームに19年ぶりの夏1勝をもたらした。記録に残る勝利だとは試合後に知った。「無我夢中だったのでよく覚えていない」
大阪市平野区の出身。海洋を選んだのは、祖父の暮らす長崎県の対馬で見た漁師たちへの憧れだった。小学4年のときに海の仕事に就きたいと思い、その夢を今ももち続けている。
航海船舶コースで学び、実習船に乗るようになると、船の乗組員をめざすようになった。4級海技士(航海)や海上特殊無線技士、2級小型船舶操縦士、危険物取扱者乙種(4類)、水産海洋技術検定――。海の資格を9個も取得した。
船の中という狭い環境。うまくやるには仲間との協力が欠かせない。「野球も同じ」と田中君。船の実習を野球で生かし、野球の経験を船で役立てている。
この日は6回を投げて1失点。打席では3打数2安打1打点。卒業後、海上技術短期大学校に進み、船員になるための技術を高めるつもりだ。「海に出たら野球はもうできない。この夏は仲間と一緒に少しでも長く野球をしたい」。15日の3回戦もその思いをぶつける。(山崎琢也)