(31日、選抜高校野球 明豊1―0龍谷大平安)
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龍谷大平安(京都)の三塁手奥村真大(まさひろ)君(2年)は、祖父、父、兄と甲子園に出場した野球一家に生まれた。「追いつきたい」。重圧を力に変え、甲子園で毎試合安打を放った。
25日の1回戦の津田学園(三重)戦では、延長十一回に貴重な適時二塁打を打ち、29日の2回戦、盛岡大付(岩手)戦では、二塁打を含む2安打。31日の準々決勝、明豊(大分)戦でも好投手から四回に右前安打して好機をつくった。だが惜しくも敗れ、「1本しか打てず悔しい」と悔しさをにじませた。
滋賀県湖南市の出身。祖父展三(てんぞう)さん(74)は、甲賀(滋賀、現水口)の監督として第40回大会に出場した。父伸一さん(50)は甲西(滋賀)の選手として、兄の展征(のぶゆき)さん(23)は日大山形の主将として夏の甲子園に出場し、ともに本塁打を打った。兄はプロ野球ヤクルトの内野手だ。
奥村君にとって、そんな家族の経歴はプレッシャーだった。特に兄はどれだけ練習しても追いつけない存在。「お兄ちゃんすごいね」。「お兄ちゃんならできた」。周囲から見られる基準は兄だった。
劣等感を抱き続けたが、奮起する糧にした。練習がしんどいときも、調子が悪いときも「お兄ちゃんならできる。ここで諦めたらお兄ちゃんに負ける」と自分に言い聞かせてきた。中学のころは毎朝、自宅の室内練習場で打撃練習に励み、5キロの道のりを走って通学した。
昨夏の京都大会と甲子園では1年生としてただ一人ベンチ入り。秋からは三塁手、5番打者に定着し、打線の中軸を担う。秋の公式戦10試合で12安打8打点を挙げ、履正社(大阪)との近畿大会準決勝では3点本塁打も放った。
選抜出場決定後、「お兄ちゃんは甲子園に1回しか出ていないけど、僕はもう2回」とうれしそうに話した奥村君。試合後、「もっと練習して、父も兄も超えたい」とさらなる飛躍を誓った。アルプス席で見守った展三さんは「3世代で甲子園の土を踏めたのは幸せ。きょうも懸命にプレーしていた」。伸一さんは「夏には(甲子園で、自分と兄が記録した)本塁打を打ってほしい」とエールを送った。(川村貴大、吉村治彦)