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夏休みの楽しいひと時を過ごすはずのプールが、悲劇の場に変わってしまった。埼玉県ふじみ野市の市営プールで、家族らと来ていた小学2年の女児が吸水口に吸い込まれて死亡した。プールの吸水口や排水口は以前から危険性が指摘されてきた。各地のプール設置・管理者は速やかに安全性の一斉点検を進め、事故防止を徹底してもらいたい。 このプールは側面の吸水口からポンプで水を吸い込み、排水することで水の流れを作る「流れるプール」。吸水口の前には格子状のふた2枚が固定されていたが、事故当時は1枚が外れていた。利用客が監視員に伝え、監視員は吸水口に近づかないよう注意を呼びかけていたところだった。 外れたふたを取り付けるまで、ポンプを停止して吸水をストップさせていたら。利用客全員にいったんプールから上がってもらっていたら。監視員がプールに入り、吸水口の前に立ちはだかっていたら--。いずれかの手立てが講じられていれば、事故は防げたに違いない。そのことが悔やまれる。 このプールの管理・運営は、ふじみ野市が民間の業者に委託していた。市によると、事故発生時の対応マニュアルも業者が作成していたが、「災害発生→作業停止・運転停止→被災者救出」などと図にしただけの簡単な内容だった。さらにこの業者は監視員の派遣も含め、業務を別の業者に丸投げしていた。これで十分な安全管理ができたのだろうか。業者に安全管理を事実上任せきりにしていた市の姿勢も問われる。 吸引力が強い吸水口でなくても、プールには水を浄化するために排水口が必ずあり、手や足を吸い込まれる事故が頻繁に起きている。日本体育施設協会によると1965~04年の40年間に、排水口による事故は少なくとも59件発生し、54人が死亡した。ほとんどが小中高校のプールで起きている。 文部科学省は毎年夏前に、プールの排水口にネジやボルトで固定したふたを設置するよう都道府県などに通知している。それでも同協会の03~04年の調査では、3万203校のうち589校(2%)がふたを固定していなかった。今回の事故で外れていたふたは針金だけで固定されていたという。 04年7月には新潟県内の町民プールで排水口のふたが外れ、小学生が死亡する事故があり、安全管理担当だった当時の町職員2人が業務上過失致死罪で罰金刑を受けている。プール管理者は、責任の重さを改めて自覚してほしい。 プールについては法令による安全基準は設けられていない。都市公園内のプールを対象に日本公園緑地協会が作成した技術解説書は、排水口のふたを二重に設置することを提言している。今回のプールでも格子状のふたとは別に吸水口に直接、金網のようなふたも取り付けられていれば事故は起きなかったかもしれない。今後、統一した安全基準作りも検討する必要があるのではないか。 水の怖さを知り、事故には十分に気をつけたい。 毎日新聞 2006年8月2日 |
社説:プール事故 安全の一斉点検を急げ
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