【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は15日、米グーグルがインターネット検索サービスを巡ってEU競争法(独占禁止法)に違反した疑いがあるという内容の異議告知書を同社に送付したと発表した。欧州委はグーグルが欧州のネット検索市場で支配的な地位を乱用している恐れがあるとみて5年前から調査してきた。
告知書の送付は独禁法に違反する行為を是正するための手続きの第1段階にあたる。欧州委は今後、グーグル側からの文書や聴聞を通じた反論などを経て、独禁法違反かどうかを最終判定し、制裁金の金額などを公表する。手続きにはなお数カ月がかかる見通しだ。
結果次第では、グーグルが欧州でのビジネスの抜本的な見直しを迫られる可能性もある。
欧州のネット検索市場におけるグーグルのシェアは約9割に達する。欧州委はグーグルが検索サービスで圧倒的に高いシェアを持つという有利な立場を乱用し、検索サイトで自社のサービスや商品が有利になるようにして同業他社を締め出した疑いがあるとみている。
欧州委はさらに、グーグルが提供するスマートフォン(スマホ)向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」についても独禁法に基づく調査を始めると表明した。これは検索サービスに関する疑惑とは別の調査になる。
アンドロイドについては、グーグルが独禁法に反するような協定を結んだり、スマホ分野での支配的な地位を乱用したりしていないかを調べる。欧州委はグーグルが欧州で他社のスマホ向けOSを締め出している可能性があると考えている。
EUの独禁法は違反企業に対し、世界全体の売上高の10%を上限に制裁金を支払うように命じることができる仕組みとなっている。グーグルの2014年12月期の通期での売上高は660億ドル(約7兆8900億円)で、制裁金は最大60億ユーロ規模になる可能性がある。
欧州委で競争政策を担当するベステアー委員は15日の会見で「支配的な企業それ自体は問題ないが、市場での強力な地位を乱用しないという責任がある」と強調した。
欧州ではネット市場を米企業に支配されることへの懸念が強い。