企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上なくす労働者派遣法改正案が19日午前、衆院厚生労働委員会で与党の賛成多数で可決された。同日午後の衆院本会議に緊急上程して可決し、参院に送付する見通し。与党は24日までの国会会期を大幅に延長する方針で、今国会で成立する公算が大きくなった。
衆院厚労委で答弁する安倍首相。左は塩崎厚労相(19日午前)
厚労委では採決前に安倍晋三首相が出席して質疑が行われた。首相は「不安定な派遣就労に固定化するのではなく、雇用を維持しつつキャリア形成を図る。雇い止めが生じることは全くない」と強調。改正案によって派遣労働者の労働環境が悪化すると主張する野党に反論した。
「同一労働同一賃金推進法案」も厚労委で、与党と維新の党の賛成で可決された。同法案は当初、民主党と維新などが共同提出したが、与党が維新との修正に応じて再提出し、維新はその見返りとして派遣法改正案の採決に協力した経緯がある。維新との連携を分断された民主党は19日中の衆院本会議への緊急上程に反発し、本会議の採決前に退席した。
派遣法改正案は昨年の国会で2回廃案になっており、政府は今国会の最重要法案の一つに位置付けている。現行法では秘書など26の専門業務を除き、派遣労働者の受け入れ期間は3年を上限としている。改正案はこの制限を全業務でなくす。
企業側は同じ仕事を派遣社員に任せ続けられるようになる。多様化する労働者の「働き方」のニーズに応じやすくする狙いがあり、経済界からの要請も大きい。一方、民主党は同改正案が成立すれば「派遣社員が固定化し、生活が不安定になる」と問題視している。