高校生や大学生に正しい性の知識を身に付けてもらい、予期せぬ妊娠や性感染症を防ごうと、若者グループが出前講座を続けている。自分の経験も隠さず打ち明け、同じ目線に立って伝える講座は「少し年上のお姉さん、お兄さんなら、親や先生より気軽に性の話が聞ける」と好評だ。
「もし、今みんなに子供ができたら、笑顔で迎えられるかな」。昨年11月、神奈川県立港北高校(横浜市)。3年生の男女約280人にNPO法人ピルコン(東京)の代表、染矢明日香さん(30)が語り掛けた。「私は学生時代に中絶を経験しました。罪悪感は今も消えません」。ざわついていた体育館が静まった。
染矢さんは大学3年の時に妊娠し、迷った末に中絶した。考え抜いて出した結論だったが、しばらくは「私に幸せになる資格なんてないんじゃないか」という思いでいっぱいだった。そんな時、インターネットで目にした中絶件数の多さに衝撃を受けた。
「他の人に同じ思いをしてほしくない」。2007年に避妊や性感染症の啓発をする学生団体を立ち上げ、13年にNPO法人化した。
この日は、染矢さんら4人のスタッフが避妊や月経について、図を示しながら説明。性感染症にかかったことがあるスタッフが経験を語り「治すのに時間もお金もかかった。みんな気を付けようね」と呼び掛けた。
事前アンケートで男子生徒から寄せられた「性器が小さい」との悩みには、染矢さんが「大きさより、相手を大切にできるかの方が大事だよ」。参加した男子生徒は「体験談も交えてあって、身近に感じた」と話した。
厚生労働省の調査では、14年度に行われた人工妊娠中絶は約18万1900件。減少傾向ではあるが、年代別で最多は20~24歳の約4万件で若い世代が目立つ。
これまでピルコンの講座を受けた全国の高校生らは3千人を超える。染矢さんは「私の経験は、性経験があれば誰にでも起こりうる。相手と自分の人生に大きく関わることだから、正しい知識を身に付け、パートナーと安心できる関係を築いてほしい」と願っている。〔共同〕