沖縄県議会の現在の構成
5日に投開票を迎える沖縄県議選(定数48)の焦点は、翁長雄志(おながたけし)知事を支える社民や共産といった与党勢力が過半数を維持できるかだ。県内の女性の遺体を遺棄した容疑で米軍属の男が逮捕された事件をきっかけに高まる「反基地」の世論をにらみながら、各候補が選挙戦を展開している。
特集:沖縄米軍と事件
5月30日夕、米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市のスーパーの前で、県議会では野党の自民の新顔がマイクを握った。並ぶのは1月に再選した佐喜真(さきま)淳市長や自民の国会議員たち。4人で計20分ほど演説したが、だれも事件には触れなかった。28日には県連会長の島尻安伊子・沖縄北方担当相が沖縄市で街頭に立ったが、ここでも事件に触れず「政権と県のパイプが必要」と訴えた。
自民は、普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐって翁長氏と厳しく対立する。1月の宜野湾市長選では、安倍政権の支援を受けた現職の佐喜真氏が、翁長氏が事実上擁立した新顔に圧勝。今回の県議選では現在の13議席から伸ばそうと19人を公認した。党本部も地方選としては異例の支援をした。
そのさなかに起きた事件。逮捕後、県連幹部が集まり、事件への抗議を決める一方、「事件と選挙は別」と確認した。各陣営からは「県議選は地縁血縁」「影響はない」との声が多いが、県連幹部は「基地は嫌だという感情は、簡単に政府、自民党への批判につながる」と懸念する。
一方、翁長氏を支える与党。社民現職は5月30日、米軍嘉手納基地近くの沖縄市の交差点で訴えた。「こんな悔しい、悲しい沖縄を、子や孫に引き継いではいけない」。与党の現職県議の陣営幹部は「事件後、空気が明らかに変わった」と話す。保守地盤の商店街でも、若い主婦らが選挙ビラに目を通してくれるという。
翁長氏も積極的に与党候補の応援に回る。日曜の同29日は4候補の陣営を訪れて集会や街頭で計7回演説し、6月1日にも本島北部で支持を訴えた。ただ、中身は「辺野古に新基地を造らせない」と従来通り。県議会が5月26日に決議した「海兵隊の撤退要求」も演説で語らない。
社民陣営の関係者は「辺野古反対はもはや当たり前。もっと強い姿勢を示してもいいのに」と漏らし、翁長氏に近いある首長は「いつになく慎重に見える」。翁長氏を支えるグループは6月19日に大規模な県民大会を開く準備を進めているが、県議選後には大会のスローガンを決める。翁長氏の後援会関係者は「県民感情がどこに向かうのか、しっかり見極めているところではないか」と語った。(吉田拓史、岡田玄、上遠野郷)