1本8万8千円の日本酒「夢雀(むじゃく)」について語る松浦奈津子さん=山口市、金子淳撮影
1本で税抜き8万8千円――。750ミリリットルの青い瓶に収められ、年代物の高級ワインにも劣らぬ価格で発売された山口産の日本酒が売れ行き好調だ。「(むじゃく)」と名付けられた酒は、山間地とコメづくりの再生にかける、山口県岩国市出身の松浦奈津子さん(35)の情熱の結晶だ。
今月初旬、アラブ首長国連邦のドバイ。アルマーニ・ホテルの和食レストランで松浦さんら7人が夢雀を置いたテーブルを囲んだ。ホテルの飲食部門責任者が酒の入ったワイングラスを回転させて鼻に近づけた。一時置いて口に含むと、うなずいた。「フルーティーで香りが良い。飲ませたい人の顔が浮かんだ」。その場で6本が注文された。
夢雀は、日本では8月下旬に250本限定で売り出され、ほぼ完売した。だが、松浦さんの狙いはあくまでも海外展開にある。
自らが「山奥の田舎」と呼ぶ岩国市錦町(旧錦町)の農家に生まれた。豊かな自然に囲まれた大好きな郷里には、しかし、若者が求める仕事はなかった。
大学卒業後は山口市でコミュニ…