囲碁名人戦第6局を制した井山裕太名人=27日午後6時38分、静岡県河津町、堀英治撮影
第41期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第6局は27日、静岡県河津町の旅館「今井荘」で2日目が打ち継がれ、午後6時25分、井山裕太名人(27)=棋聖、本因坊、王座、天元、碁聖、十段をあわせ七冠=が挑戦者の高尾紳路九段(40)に185手までで黒番中押し勝ちし、3連敗後の3連勝でタイに追いついた。持ち時間各8時間のうち、残り時間は井山名人が2分、白番の高尾挑戦者が21分。劇的な展開となったシリーズは、11月2、3の両日、甲府市で打たれる最終第7局で決着する。
封じ手(黒69)から大変化へと導いた名人の発想力が検討陣を驚かせた一局。しのぎ勝負に出た挑戦者に対し、的確に攻めを繰り出して勝利をつかんだ。名人が大逆転での防衛へ、あと1勝までこぎ着けた。
2日目の開始直後に始まった左下一帯の攻防で、名人は黒75、77から「コウ」を誘い、挑戦者に下辺一帯を与えるかわりに黒87までで手厚い碁形を得た。
挑戦者が白88と左辺の一団の逃げ出しをはかると名人は攻勢に立ち、急所に迫った黒113から完全に主導権を手にした。上辺の白をも狙いながら攻めの余得で優勢を不動のものとし、最後は右上の白を仕留めた。解説の蘇耀国九段は「際どく競り合ってはいても、常に名人が少しリードしていた気がします。名人の完勝に近い内容でした」と話した。(伊藤衆生)
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井山名人の話 (黒113以降)まったく見通しの立たない戦い。黒163が打てて、いけると思った。最終局は、いままでやってきたことを出すだけです。
高尾九段の話 1日目の午前中、どこかで打ちづらい碁にしてしまった。黒141がいい手で、参った。最終局は、いままで通り精いっぱい打ちたい。