期末テストの期間中も素振りやランニングなどに取り組む洛星の選手=8日午後4時25分、京都市北区
わずか部員10人の洛星高校(京都市北区)が、来春の選抜高校野球大会の21世紀枠で、京都府の推薦校に選ばれた。京都有数の進学校で、少人数をカバーするため、全員が複数ポジションをこなすなど工夫し、秋の府大会では8強入り。甲子園への夢を膨らませる。
バーチャル高校野球
洛星は卒業生の4割以上が京都大か東京大に合格している私立の中高一貫校。中学の軟式野球部は強豪で、府大会で優勝経験もある。だが、高校進学時には野球部から離れてしまう生徒が少なくない。それでも、「ここまで少数なのは記憶にない」と中村好邦監督(39)。今の2年生は10人中5人、1年生は20人中5人しか野球部に残らなかった。
さらに、学校の規則で、平日の練習時間は1時間半ほど。「普通のことをしているだけじゃ勝てない」(中村監督)。そこで導き出したのが、「全員全ポジション」だ。
けが人や不調な選手がいても対応できるよう投手、捕手、内野手、外野手の練習に日替わりで取り組む。10人全員が、公式戦、練習試合のいずれかでマウンドに立った。試合では三塁コーチを2年の吉田大樹(ひろき)主将(16)が主に務め、一塁コーチには通常、打順が最も遠い選手が入る。
中村監督は、「自分がやるんだ、という主体性が選手を強くする」と話す。秋の府大会では、1年生エースの水江日々生(ひびき)選手(16)を中心に接戦を勝ち抜き21世紀枠の選考基準を満たす8強入り。準々決勝で甲子園常連校の龍谷大平安に0―5で敗れたが、文武両道を目指す姿勢が評価され、推薦校に選ばれた。
野球の快進撃は勉強にも影響を与えている。吉田主将は、「勉強しないから野球が強い、と言われたくない。どっちも手は抜かない」と話し、部員のほとんどが難関大学を目指す。
選抜出場が決まれば、春夏通じて初めての甲子園。1986年秋の府大会で準優勝し選抜大会にあと一歩に迫った時のエースで、宝石店の社長を務める今西信隆(のぶたか)さん(47)は「後輩たちには何とか歴史に風穴を開けて、歴代野球部の悲願を果たしてほしい」と期待を寄せる。
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21世紀枠は16日に近畿2府4県の推薦校(1校)が選出され、1月27日の選考委員会で全国9地区の推薦校から3校が選ばれる。近畿からは他に、彦根翔陽・彦根翔西館(滋賀県)、今宮(大阪府)、三田松聖(兵庫県)、高取国際(奈良県)、日高(和歌山県)が選ばれている。(増山祐史)