大縄跳びするかかし。青空に映える=福岡県糸田町
縄跳び、木登り、だるまさんが転んだ。昔ながらの遊びに興じるのは子どもたちではなく……。リアルなかかし計50体が福岡県糸田町の「道の駅いとだ」と「泌泉(たぎり)公園」に現れた。町の呼びかけで住民たちが古着や稲わらを持ち寄って作り、新たな糸田名物に育てようと初めて試みた。
テーマは「昔遊び」。道の駅には、柵によじ登って遊ぶ子どもやベンチに座って休む大人の姿がある。だるまさんが転んだで遊んだり、相撲を取ったりするかかしも。泌泉公園では大縄跳び、木登り、綱引きが繰り広げられている。
踏ん張った足や広げた手など、いまにも動き出しそうなポーズが印象的だ。「身長」は1メートル前後。町内の農家から提供された稲わらを本体に、寄せられた古着をまとう。年配の人を中心にしたボランティア約30人が制作に携わった。
参考にしたのは大分県中津市の山国地区の取り組みだ。かかしの野外展示イベント「やまくにかかしワールド」で知られ、秋には多くの観光客が訪れる。
これに着目した佐々木淳町長が「お年寄りをはじめとする町民の生きがいづくり、稲わらや古着といった資源の再利用、観光客の誘致と特産品の販売促進など様々な波及効果がある。糸田のまちおこしに使わない手はない」と考え、町職員らを現地へ派遣。かかし作りの名人から作り方を教わった。
町が古着を募ったところ、亡くなった夫の衣類を大切にしまっていた女性から「生かしてほしい」と申し出があるなど、多くの協力があったという。
地域振興課の柏木真範さんは「顔に表情がない分、体のポーズだけで躍動感を出すのに苦労しましたが、多くの町民の皆様の気持ちがこもっています。糸田を盛り上げ、発信するきっかけになれば、うれしい」。
いずれは道の駅と泌泉公園を結ぶ田園の道沿い約2キロを「かかしロード」とし、観光客を町内へ導き入れる糸口にする考えだ。山国のイベントにかかしを出品するなど連携によるPRもめざしたいという。今回の展示は3月末まで。(中村幸基)