記者会見し金正男氏について語る五味洋治・東京新聞編集委員=東京・有楽町の日本外国特派員協会、北野隆一撮影
マレーシアで暗殺されたとみられる北朝鮮の金正男(キムジョンナム)氏を直接取材し、著書を出した五味洋治・東京新聞編集委員が17日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見した。「北朝鮮の体制批判をした勇気を称賛したい。今は彼の死を深く悼みたい」と語った。
五味氏は2004年、北京の空港で偶然見かけた金氏に名刺を渡したところ、メールが送られてきて交流が始まった。マカオや北京で3回会って計7時間インタビューし、150通のメールとともに12年、「父・金正日と私 金正男独占告白」の題で出版した。
五味氏によると、金氏は「権力の世襲は社会主義体制と合わず、指導者は民主的な方法で選ばれるべきだ。北朝鮮は中国式の経済改革開放しか生きる道はない」と主張。金氏が取材に応じた理由について「彼なりの決心で、身の危険を感じながら、自分の意見を平壌に伝えたかったのだろう」と推測する。
金氏は9歳からスイス・ジュネーブに留学し、20歳前に帰国。父の故金正日(キムジョンイル)総書記とともに北朝鮮全土で経済開発の状況を視察したが、欧州で見た社会とあまりに違うため意見が合わなくなり、北朝鮮を去ったという。「一時的には父から後継者と見られていたのではないか」と五味氏はみる。異母弟の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長について「会ったことがない」と答え、「どんな仕事をして生きているのか」との問いにははっきり言わず「投資の仕事をしている」とだけ答えたと振り返った。
会った印象を「遊び人でギャンブル好きという噂(うわさ)もあったが、私が会った金氏は礼儀正しく知的だった」と話した。(編集委員・北野隆一)