日本の席には被爆者の箕牧智之さんが折り鶴を置いた=20日、米ニューヨークの国連本部、真野啓太撮影
核兵器禁止条約の交渉会議が進む米ニューヨークの国連本部の議場に、小さな折り鶴が置かれた。核兵器のない世界を求め続けてきた、被爆国・日本の人々が思いを込めたものだ。
特集:核といのちを考える
今月15日から7月7日まで続く交渉会議には100カ国以上が参加している。しかし、そこに核兵器を持つ米国、英国、ロシア、フランス、中国や、米国の「核の傘」に安全保障を委ねる日本などの代表の姿はない。
会議に参加するために議場を訪れた松井一実・広島市長は「核兵器を持つ国の為政者こそ、リーダーシップをとるべきだ」と、核保有5カ国の机に折り鶴を置くことを提案。松井氏が会長を務める平和首長会議の関係者が折った。松井氏は「折り鶴で核保有国に直接、訴えかけようと思った」と語った。
一方、松井氏は日本の席に折り鶴を置くことはなかった。交渉会議に合わせて渡米した被爆者の箕牧(みまき)智之(としゆき)さん(75)=広島県北広島町=は「市長が置かないなら私が」と、日本の席にも折り鶴を置いた。渡米に先立ち、北広島町役場の職員から預かった千羽鶴の一部だった。「どこかで出番があるだろう」と携えてきた。
「唯一の戦争被爆国の日本にこそ、核廃絶に向けてリーダーシップをとってほしい」と箕牧さん。折り鶴は置いたが、「これで日本が参加するなんて思っちゃいないけど、静かな抗議ですよ」。
折り鶴は平和を願う象徴として…