東筑の投手、石田旭昇君=小郡市、伊藤友博撮影
(28日、高校野球福岡大会 東筑3-1福岡大大濠)
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福岡大会決勝。一回、高めの直球を先頭打者に中堅に運ばれた。悪送球の間に本塁へ。東筑のエース、石田旭昇(あきのり)(2年)は苦笑いして捕手とグラブをつきあわせた。
初めての大舞台。「スタンドの声援に圧倒された」。2死三塁、帽子をとって腕で汗をぬぐう。投げた球は打者の体に当たった。
「楽しめよ」。そこで、三塁手の坂口慶太君(3年)が笑いかけてくれた。次の打者を三振に打ち取り、ピンチを切り抜けた。
「君が石田君か」
部の新入生歓迎会で卒業生に声をかけられた。東筑には、5回の夏の甲子園出場のうち、3回のエースの名字が石田だという「石田伝説」があると知った。
同級生には球の速い投手がいた。自分に何ができるか考え、横手投げに変えた。だが、昨秋の県大会では登板できなかった。冬の間、打者を立たせて9回を投げ込み、食べる量も秋から倍にした。フォームが安定し球速は10キロ上がった。
背番号1を背負った今大会。プレッシャーはあった。だが、「気負うことないぞ」「頼むぞ」。3年生が励ましてくれた。試合中も支えは3年生。ピンチのたびにマウンドに駆け寄って声をかける。守備を信じた打たせてとる投球で決勝にたどりついた。
九回、打者を1人打ちとると、遊撃手で主将の安部滉平(3年)が駆け寄って、「気を抜くなよ」。2人目も打ち取り、あと1アウトの場面で、マウンドに集まった3年生1人ひとりが声をかけてきた。「いつもどおり」「楽しく」
特別じゃない、27アウトのうちの1つ。いつも通りのフォームで直球を投げ、内野ゴロに打ちとった。「夢みたい」
伝説については考えないようにしている。「少しでも、3年生と長い夏を過ごしたい」。
そんな4代目の「エース石田」を、3代目の「石田」がスタンドから見つめた。石田泰隆さん(39)だ。21年前の第78回全国高校野球選手権大会でエースとして甲子園のマウンドに立った石田さんは、後輩らに向けて「1試合でも長く監督と野球をしてほしい」とエールを送った。(新屋絵理)