春季府大会2回戦で本塁打を含む2安打の2年生宮本。夏に向けては、新戦力の台頭も不可欠だ
しまっていこー 大阪桐蔭
「夏の山」
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球児の今に密着 特集「しまっていこー」
大阪桐蔭の西谷監督や選手たちから、この言葉を何度聞いたことか。選抜連覇を達成した4月4日から一夜明け、宿舎を出発する時、主将の中川卓也(3年)は気持ちをきっちりと切り替えていた。
「余韻に浸っている暇はない。選抜を最後まで戦った自分たちは、夏の日本一という『山』に登り始めるのが一番遅い。これから急ピッチで駆け上がりたい」
西谷監督は選手に語りかけるとき、イメージしやすいように比喩表現を使うことが多い。
春と夏の甲子園を「春の山」と「夏の山」に例え、「春の山をいったん下りて、夏の山を登らないといけない」と言う。
つまり、春の延長線上に夏がある、というわけではないということ。春と同じ戦いでは、夏は勝てないというわけだ。
とりわけ、夏を勝ち抜くために必要なのが「打力」。昨夏は徳山壮磨(現早大)、柿木蓮(3年)ら投手陣は踏ん張ったが、打線の状態が最後まで上がらなかった。2回戦の智弁和歌山戦は2―1で勝利したが、3回戦の仙台育英(宮城)戦は1―2で逆転サヨナラ負け。劇的な負け方ばかりにスポットが当たったが、「打てなかったこと」が敗因であるのは、監督も選手も一致する分析だ。
「夏はどんな投手でも打たれる」と西谷監督が「前提」として言うのも、春と夏の違い。
その意味で、選抜後の最初の公式戦となった春季府大会の2回戦は、一回表に精華に2点を先取された直後の攻撃で6点を奪って逆転し、いい経験になったはずだ。
「取られた後にすぐに取り返せたのはよかった。夏を想定してやっている中で、先に点を取られる展開もあるので」と副主将の根尾昂(3年)も言う。
大阪桐蔭としては、藤浪晋太郎(現阪神)らを擁した2012年以来の春夏連覇へ。この偉業を2度達成したチームは、甲子園の長い歴史を振り返っても、ない。「夏のチームづくり」は始まったばかりだ。(山口史朗)