社会人野球の第89回都市対抗野球大会最終日は24日、東京ドームで決勝が行われ、近畿第2代表の大阪ガス(大阪市)が同第1代表の三菱重工神戸・高砂(神戸市・高砂市)との近畿勢対決を2―0で制し、3度目の決勝進出で初優勝を果たした。
大阪ガスは八回、好投を続ける三菱重工神戸・高砂のエース守安から、3番峰下の中前適時打で1点を先取。守安の降板後、さらに5番近本の中前適時打でリードを広げた。投げてはエースの温水(ぬくみず)が八回途中までを無失点でしのぎ、緒方への継投で零封した。
48年ぶりに決勝に進んだ三菱重工神戸・高砂の初優勝はならなかった。
最優秀選手にあたる橋戸賞には今大会の打率5割2分4厘(21打数11安打)で首位打者の大阪ガス・近本光司外野手が選ばれた。
継投のタイミングが明暗
初優勝への執念を感じさせる、思い切った継投だった。今季から指揮をとる大阪ガスの橋口監督(50)は八回、安打で、この試合初めて先頭打者に出塁を許したエース温水に交代を告げる。一死二塁で救援した緒方(27)が後続を退け、打線はその裏、相手のエース守安(31)から決勝打。継投のタイミングが結果として明暗を分けた。
過去2度の決勝はともに敗れ、日本選手権も準優勝が3度。「2位はもういい。優勝しか頭になかった」と橋口監督は言う。
今大会は粘り強さが際立った。2回戦から3試合続けて1点差の逆転勝ち。優勝経験のあるチームを連破し、決勝では3試合連続完封勝ちの三菱重工も振り切った。ベンチにはチームの合言葉「惟一心(これいっしん)」が書かれた色紙。その誓い通り、心をひとつに戦い、要所で投打がうまくかみ合った。
同社がガスを供給するエリアは6月、大阪北部地震に見舞われ、選手たちは練習を休んで復旧作業に力を合わせた。こうした経験もチームの和をはぐくんだ。
交代時、エース温水にはまだ余力があるようにも映ったが、本人は納得していた。「惟一心。チームが一丸となれた結果です」。今秋のドラフト候補にも挙がる24歳はそう胸を張った。(杉山圭子)