100回目の夏の栄冠は、聖地の土を踏みしめたことがなかった公立校に輝いた。第100回全国高校野球選手権記念三重大会は25日、四日市市営霞ケ浦球場で決勝があり、白山が8―2で松阪商とのノーシード校対決を制し、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。3回戦でシード校菰野を破って勢いに乗り、菰野戦を含む3試合を1点差で制した。選手権大会は8月2日に組み合わせ抽選があり、同5日に開幕する。
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鍛えた打力でヒーローに 白山・有森紫苑選手
初の甲子園への切符は、自らのミットでつかみとった。九回裏2死二塁、一塁手の白山の有森紫苑(しおん)選手(3年)は、ゴロを捕った三塁手からの送球を、体を伸ばして捕球。「決まった!」。試合終了と同時に、マウンドに駆け寄り、仲間と歓喜の輪を作った。
有森選手は打撃でもヒーローになった。「思いきりいけ」。五回表1死満塁、東拓司監督から声をかけられ、打席に立った。待っていたど真ん中の直球を思い切り振り抜いた。「打った感触がないくらい、気持ちよくバットを振れた」
打球は「外野席に入った」と思うほど、ぐんぐん伸び、左翼手の頭上を越えた。走者一掃の適時二塁打でリードは5点に。有森選手は二塁ベースで、ガッツポーズした。「甲子園がぐっと近づいた気がした」
中学までは小技で稼ぐタイプ。遠くまで飛ばすことはほとんどなかった。しかし、白山に入学後、東監督の指導で打力を強化してきた。重いバットを振り込み、スイングスピードを上げたり、スローボールを外野に飛ばす練習で長打力をつけたりした。
名張市から電車通学する。学校の最寄り駅からは自転車で山を越えて約30分かかるが、練習後も投手に球を投げてもらい、ミートの感触を確かめた。東監督は「誰よりも努力し、体を作って振り込んできた」。今大会は打率4割。優勝に大きく貢献した。
白山に入学した2年前、先輩部員は10人程度。「来年は何人入ってくるのか……」。部員確保が気になるほどだったが、節目の大会への思いは強かった。「自分が3年生になる時が、100回大会という意識はあった。甲子園を決めてうれしいです」。下克上の立役者が、口元を緩めた。(甲斐江里子)