第101回全国高校野球選手権三重大会(朝日新聞社、県高校野球連盟主催)は大会2日目の13日、3球場で試合が始まり、1回戦8試合があった。第3シードの津商が古豪の宇治山田商に敗れる波乱があり、昨年準優勝の松阪商も宇治山田に粘りを見せたものの、涙をのんだ。
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背番号5 人一倍の努力 津商・宮園大聖選手(3年)
試合で最後の打者になり、守備では三つの失策を重ねた。
津商の宮園大聖選手(3年)は試合終了のあいさつを終え、ベンチに戻ったときに心に決めた。
「仲間や監督に謝ろう」
なのに、宮本健太朗監督は遮った。
「謝るな。今までやってきたことが全部だめになるぞ」
誰よりも努力してきたことを間近で見ていたからこそ、その努力を否定してほしくなかったからだ。「堂々としていけ」。宮本監督は宮園選手の肩にそっと手を置いた。
宮園選手は1年の夏、右目に自打球を当てて重傷を負った。手術を繰り返したが、視力はほとんど戻らない。今もほぼ左目だけで過ごしている。
練習から数カ月間離れ、チームに戻ったときには打撃でも守備でも全く違う世界が広がっていた。打球の距離感が全くつかめず、捕れたと思った打球を何度も落とした。
野球を辞めようと何度も考えた。家ではふて腐れていた。でも宮本監督は「宮園、それはないやろー」と声をかけ、宮園選手がチーム内で気まずさを感じないようにしてくれた。
100人以上の部員がいる津商でレギュラーになるのは並大抵のことではない。だが、懸命の努力が報われ、ついに背番号「5」を勝ち取る。部員たちはそんな宮園選手を見て勇気づけられた。
球場を去った宮園選手の目には涙はない。「この背番号があるから今の自分がある」。宮本監督や仲間と歩んできた2年半。絶対に忘れられない濃密な時間だった。(村井隼人)