政府系の国際協力銀行(JBIC)総裁に先月就任した前田匡史(ただし)氏が朝日新聞のインタビューに応じた。日立製作所の英国での原発計画への支援に前向きな姿勢をみせる一方、計画は安全基準の厳格化などで事業費が高騰しており、「厳しいことは事実。政治的リスクもある」との見方も示した。
日立は子会社を通じて英国で原発2基をつくる。完成後に電力を売って収益を得る予定だが、事業費の高騰で採算性は厳しくなる見通しだ。英政府に高値での電力買い取り価格保証を求めており、交渉は難航しそうだ。前田氏は「建設中のコスト増加が大きなリスク」とし、英政府との交渉は「(価格を)下げろという(英政府との)せめぎあいになる」と述べた。
英政府は日立の計画への資金支援を検討しているが、欧州連合(EU)からの離脱交渉などで不透明さが増しているとも指摘した。
前田氏はJBICの資金支援について「まだ融資の要請は受けていないが、相談にはのっている。バンカブル(融資可能)にするためのアドバイスはできる」と語った。「融資が前提ではない。できることはやるが、できないことはできない」とも述べた。
前田氏は原発や新幹線などのインフラ輸出に精通し、民主党政権で内閣官房参与として原発輸出を推し進めた。6月、国際協力銀では初の生え抜き総裁に就任した。(高橋諒子)