(5日、高校野球 済美5―4中央学院)
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第2試合で初戦を勝ち抜いた済美(愛媛)のアルプススタンドでは、西日本を襲った7月上旬の豪雨で被災した生徒も声援を送っていた。
チアリーダー森脇紗香(さやか)さん(2年)はスタンドから精いっぱい声を出した。森脇さんの愛媛県大洲市の自宅は床上浸水の被害にあい、家族全員で2日間、近くの学校に避難した。「みんなと踊れないかもしれない」。列車が不通で1週間登校できなかった。
応援に加われたのは愛媛大会の途中から。ぶっつけ本番で臨んだが、甲子園を目指す選手の懸命な姿に勇気づけられた。この日、済美は接戦を制し、選手と一緒に校歌を歌えた。「苦しい夏でしたが、よい思い出ができました。選手たちがいいプレーができるよう、次も思い切り踊りたい」と笑顔を見せた。
応援団を束ねる永井康博副校長(60)の松山市の実家も床下浸水し、土石流で納屋などが流された。「見るも無残な状態で、思い出が詰まった家財道具も埋まりがくぜんとした」。実家の母貴子さん(81)はつらい表情を見せることもあったが、高校野球が大好きで試合を楽しみにしていたという。永井副校長は「自宅でテレビ観戦した母も活躍をきっと喜んでくれたと思う。みなの気持ちを一つにできるのが甲子園。次も全力で応援したい」と話した。
先制の犠飛を放った池内優一主将(3年)は試合後、「しんどい場面では、『苦しい思いをしているのは自分たちだけじゃない』とベンチで声をかけあっていた。愛媛に元気を与えられるような全力プレーができた」。中矢太監督(44)も「観戦している被災者の方には試合の間だけでも大変なことを忘れて、明日への活力にしてもらえたら」と語った。(高橋大作、寺田実穂子)