(21日、高校野球・甲子園決勝 大阪桐蔭13―2金足農)
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遊撃の守備位置で、大阪桐蔭の根尾は背番号1を見つめていた。「頼もしかった。柿木が粘り強く投げてくれて守りやすかった」
昨春と今春、過去2回の優勝はマウンドで迎えたが、この夏は違う。「エース」の2試合連続完投で春夏連覇を決めると、根尾は「投げたかったけど、喜びは変わりません」と歓喜の輪に飛び込んだ。
「二刀流」は投げないなら、バットで貢献する。五回無死一塁。外角の140キロを「うまく打てた」。バックスクリーンへ悠々と届く、今大会3本目の本塁打。一挙6得点の猛攻の口火となった。
「1番は柿木でお願いします。自分は野手なので」。西谷監督にそんな申し出をしたのは6月下旬。北大阪大会のメンバーを決める時だ。背番号1は根尾か柿木か。監督、コーチ陣も悩んでいた時、副主将の立場でそう答えた。
一歩引いた立場でチームを見られるのが根尾という選手だ。主将ではなく、「中川をサポートしたい」。時にきつすぎるくらいの言葉でチームを引っ張る主将中川の陰で、周囲への優しい声かけを忘れない。
春の大阪府大会でメンバーから外れ、近畿大会でも背番号10だった柿木は「夏の1番をもらい、責任感がより強くなった」と、鬼気迫る投球でチームを引っ張った。
「朝早く起きて勉強しているし、遠征に行くバスでは本を読んでいる。授業中の居眠りも聞いたことがない。他の選手に与えている影響はすごく大きい」と西谷監督。根尾昂(あきら)が大阪桐蔭にもたらしたものの価値は、計り知れない。(山口史朗)