(26日、アジア競技大会・陸上男子100メートル)
スタートを告げるピストルが鳴ると、山県は好スタートを切った。ところが、蘇炳添(中)がさらに先を行く。懸命の好走だったが、自己記録タイの10秒00で銅メダル。ライバルは9秒92をたたき出した。レース後に山県は「9秒台を出せなかったのは残念。得意のスタートを磨いて今度は勝ちたい」などと話した。
大会前に「世界トップクラスと遜色ない」と話した通り、ケンブリッジが準決勝で敗退するなど、今大会の男子100メートルのレベルは高かった。
高い修正能力はアピールできた。前日25日の予選ではスタートで少し硬さが見られたが、この日の準決勝では、スタートから中盤へとスムーズに移行し、トップ通過を決めている。
短時間で修正が可能なのは、山県自身が体を制御できていることだ。「自分がどういう状況になれば速く走れるのか」。練習から映像を撮影し、頭からつま先まで、理想の動きとのズレがないかをチェック。「耳」も使う。中間疾走のトレーニングなどで、スピードが適切に上がっているか確認するため「ピッチや、リズムが速くなっていくのを足音でも感じている」。
今後への期待は大きい。1932年ロサンゼルス五輪6位で「暁の超特急」と呼ばれた故吉岡隆徳さんだけが達成した、日本選手で五輪や世界選手権の男子100メートル決勝進出。ジャカルタで大歓声を浴びた激走は、その可能性を十分に感じさせた。(遠田寛生)