一歩進むごとに景色が変わり、次々と刺激が飛び込んでくる。その場に行った人しか味わえないこの感覚は、旅と通じるところがある。「感じること」をテーマに制作を続けてきた現代美術家・椎原保(しいはらたもつ)(67)による展覧会「旅するKIITO(きいと)」が、神戸市中央区のデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で開かれている。
KIITOは、昭和初期に建てられた旧神戸生糸検査所を改修した文化施設。アーティスト・イン・レジデンスの招聘(しょうへい)作家に選ばれた椎原は、昨年6月からセンターへ通い、今展のための制作活動をした。「建物がすごく魅力的で、どういうふうに関われるかを想像しながら展示を考えていった」と言う。
約1千平方メートルのKIITOホールを含む1階全体と、2階の一部が展示に使われている。ホールでは、大小の鏡がテグスでつり下げられ、風の流れを受けてゆっくりと回転している。屋外の緑が映ったかと思えば、自分自身と目が合うことも。ハッとした瞬間には、鏡の中はもう別の景色へと変わっている。
「鏡は身体性を外してくれる。…