福井県で開かれている第73回国民体育大会の高校野球硬式で2日、今夏の全国選手権4強の日大三(東京)が劇的な逆転勝利をあげた。1回戦の敦賀気比(福井)戦で、4点を追う九回裏に5点を奪い、7―6でサヨナラ勝ち。試合を決めたのは、主将の日置航(3年)だった。
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九回表の守備で2点を失い、リードを4点に広げられた。ベンチに戻る日置は、笑って味方を励ました。「どんな状況でも、明るく。自分がしょぼんとしていたら、チームもそういう雰囲気になるから」。誰も下を向かなかった。
先頭の5番中村奎太から、5連打が飛び出す。直前に失った2点を取り返し、なおも無死満塁。暴投と1番金子凌の遊ゴロ(記録は野選)で、同点に。そして、2番木代成が四球でつないだ。満塁の好機で、日置に打席が回ってきた。
「明日、河村(唯人)にいいピッチングをさせるためにも」。六回から救援して4失点した仲間を思い、直球を振り抜いた。サヨナラを決める打球が、左前に抜けていった。
苦い経験が、努力家の主将をさらに練習に向かわせた。高校日本代表として戦ったU18アジア選手権。全5試合に先発したが、初安打が出たのは優勝の可能性が消えた後の3位決定戦。打てない期間、思い悩んで宿舎で涙を流したこともある。「次は、ああいう思いをしたくない」。そう決意し、国体に向けてバットを振ってきた。
「悔いの残る終わり方をしたくなかった」と日置。その思いを自らの一振りでかなえ、本塁で待つ仲間とともに笑った。(小俣勇貴)