紡錘(ぼうすい)形の巨体が並んでいた。隙間を縫って、仲卸人が右へ、左へ。仲間と談笑しながらも、その手は魚のうえに置かれた肉へ素早く伸びた。尾びれ近くの輪切り。色、あぶらの乗り具合で品定めをする。
目利きたちの勝負の場は、豊洲市場水産卸売場棟(東京都江東区)の一角、「大物」と呼ばれるマグロなどを扱う卸売場である。18日の日報によれば、15万2088キログラムが取引されていた。
卸売場の上階にある見学通路から見られる。ガラス窓越しのため、競りの騒がしさは聞こえない。ただ床一面の魚体、競り人と仲卸人の応酬だけでも釘付けになる。来年1月15日、見学デッキが開放される予定だ。息づかいも聞こえるほどに、その場へ近づける。(角野貴之)