近年「TKG」とも呼ばれ、シンプルにして各年代に愛される「卵かけご飯」が、「生卵は食べない」はずの外国人に浸透し始めている。日本を旅行中、開眼するケースもあるようだ。「おいしくて安全」を売りに、鶏卵の輸出も過去最高を更新し続ける。TKGが海を渡る日も近い?(中川竜児)
木々が色づき始めた京都・嵯峨野。「こだわり卵専門店たまごや」(右京区)には、散策途中の外国人客が数多く訪れる。
シンガポール在住でインド国籍の会社員ピージー・パティルさん(50)はベンチに腰掛け、黄色に染まったご飯を見つめていた。生まれて初めての、卵かけご飯。慎重な箸づかいでゆっくり口に入れた。「おいしい」
ペースは早まり、3分ほどで完食。2回目の来日だが肉や魚は食べない主義で、食事に苦労している。「日本の卵は新鮮と聞いたから試してみた。これからは、卵かけご飯も選択肢になる。シンガポールにも日本の卵があるなら試したい」
台湾から訪れた飲食店員のシャオ・ヤインさん(25)はインターネットで卵かけご飯を知り、興味を持った。「台湾では生では食べない。初めてだけどおいしかった」と完食した。英国から訪れたプログラマーのベン・ワットさん(26)は「問題ないね」と感想こそ少なかったが、残さず食べた。
「たまごや」オーナーの松岡弘樹さん(52)によると、外国人が卵かけご飯を注文し始めたのは2、3年前から。現在は客の7~8割が外国人。平日でも外国人だけで卵1個入りの並盛り20~30食、2個入りの大盛り10食近くが出る。注文をさばく母の美千子さん(73)は「外国の方が卵かけご飯を食べるのは、ここでは当たり前の風景。リピーターになって大盛りを頼む人もいます」と話す。
大阪市浪速区の卵かけご飯専門店「美味卯(びみう)」にも、外国人が訪れる。オーナーによると「若い子だと、TKGという言葉も知っている」。ユーチューブや中国の動画サイトに外国人の日本体験を配信する映像制作会社「P-CUBE」(大阪市福島区)は7月に同店を取材。台湾出身の女性スタッフが提案した企画で、配信後は「参考に店に行ってみます」などのコメントが寄せられた。
東京都新宿区の「かどやホテル」は京都丹波産の卵を使った「こだわりの卵かけご飯」を和食モーニングの売りにしている。土地柄、外国人客が多く、「卵かけご飯を召し上がる方も増えています」という。
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