2度、夏の頂点に立った球児が14年ぶりに甲子園に帰ってくる。第91回選抜高校野球大会(23日開幕)に初出場する札幌大谷で部長を務める五十嵐大(だい)さん(31)だ。
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「僕が一番、グラウンドでやりたかったですよ」。人なつっこい笑顔を浮かべながら、悔しがった。19日の甲子園練習が雨のため室内で行われたためだ。
2005年8月20日、駒大苫小牧(南北海道)が第87回全国選手権で史上6校目の2連覇を果たした。五十嵐さんは三塁手のレギュラーとして2度の優勝に貢献。86、87回の全10試合にフル出場し33打数11安打、犠打は九つを数え、失策はゼロだった。「守備とバントだけには自信があったんですよ」と笑う。
当時の香田誉士史(よしふみ)監督に育ててもらい、甲子園は人生を変えてくれた。「指導者として、そんな出会いやきっかけを高校生たちに味わわせてあげたいと思ったんです」。筑波大に進んで保健体育の教員免許を取得し、故郷の札幌に戻った。別の高校で1年間、指導した後、11年春から札幌大谷のコーチを務め、13年に部長に就いた。部員には「大さん」と親しまれる。
09年創部のチームは、昨秋の道大会で初優勝し、明治神宮大会も制した。今選抜が春夏通じて初の甲子園だ。「ここに帰ってこられるのはうれしいんですが、僕の力じゃない。選手に感謝です」
2回戦で敗退した3年春の第77回選抜を含め、計12試合を甲子園で戦った。声援が大きく内野同士でも指示の声が伝わりにくいこと、試合が進むテンポが速いこと……。経験を選手たちに伝えている。
1学年下の田中将大(まさひろ)(ヤンキース)の打者に挑みかかっていくような投球も三塁から見ていた。いまのエース西原健太(3年)には試合中、相手打者より、自分の投球内容やフォームのことが気になってしまう癖があると感じていた。「将大は『対相手』でがんがん攻めていたよ。『対自分』ではなく、『対相手』で攻めなさい」。そんな風に諭したこともある。
今年2月、選抜出場校を対象とした会議のため、甲子園球場を訪れた。05年夏以来のことだった。初戦は第2日に米子東(鳥取)と。勝って去ったこの場所で再び、戦う。(竹田竜世)