高嶋仁(ひとし)さん(72)が28日、昨夏まで監督を務めた智弁和歌山の試合を見守った。甲子園で初めて指揮を執った中谷仁(じん)監督(39)の采配や教え子たちの活躍について語った。
ニュースや動画をリアルタイムで!「バーチャル高校野球」
◇
中谷監督のノックが始まりましたね。まだ少し打つポイントが高い。初めはみんなそう。元プロ野球選手は特にね。ええノックを打とうと思うと、だんだん下がってきます。
ぼくは1人に3本打つなら、全部違うボールを打ちました。練習試合では2種類を使い分けます。本気で勝負する試合の前は、選手にエラーさせんように。そうでない時はガンガン打ちます。甲子園はもちろん、エラーさせんノックです。
選手の動きが悪いな。まだ体が起きてない。こんな時は足を動かすノックをしてやるといい。試合開始までにダッシュさせたり、四股を踏むような運動をさせたりするのも効果的です。
やっぱり振りも鈍いな。1番の細川凌平(2年)があんな三振をしとるようだと、前半戦は苦戦するかもしれませんね。案の定、一回は三者凡退です。
ぼくも21世紀枠の学校と対戦したことがあります。第83回大会(2011年)に佐渡(新潟)とやりました。前半戦は相手の勢いに押され、2―1という重い展開になりました。五回終了時に選手に発破をかけたら、六回に4点とって、ひと息ついた覚えがあります(8―1で勝利)。
二回に1点先行されましたね。大事なのはこの後です。綾原創太(2年)が四球で出て、細川が安打でつなぎましたね。ここです。2番の西川晋太郎(3年)が欲を出さず、右方向に打てるかどうか。そういう打撃ができる子なんです。おっ、うまいことライトに打ちましたね。これでもう大丈夫でしょう。一気に逆転ですね。やれやれです。
ぼくの甲子園初采配は智弁学園(奈良)時代の第48回の選抜大会(1976年)。札幌商(北海道)に5―0で勝ったんですが、六回まで0―0でした。スクイズも失敗してね。「もう好きなようにせえ」と言ったら、七回に3点入った。監督がいらんことしたらアカンな、と思いました。中谷監督も同じような心境かもしれません。
最後は選手を信じて任せるしかないんです。一緒に苦労して育ててきた選手たちです。甲子園では思い切り実力を発揮して欲しい。箕島(和歌山)の尾藤公(ただし)監督(故人)の「尾藤スマイル」も、そういう意図だったんでしょう。練習では怖い人ですからね。
「仁王立ち」と言われるぼくのスタイルも同じなんです。選手が安心して思い切りプレーしてくれればいい。ベンチ前に立っとったら、選手を怒られへんしね。だから、選手はのびのびとプレーできるでしょ。
中谷監督も少しずつ自分のスタイルを作っていったらええ。ぼくは何も言いません。やりたいようにやって欲しいと思っとります。
そやけど、クリーンアップのバッティングはだめですね。東妻純平(3年)は本塁打を打ったと言っても、ど真ん中の球なら当たり前です。次までに修正してやらなあきませんね。(智弁和歌山・前監督)