(30日、選抜高校野球 明石商13―4大分)
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二回、マウンドの明石商・宮口は表情を失っていた。4点のリードをもらった直後に、3連続四死球。ベンチを不安そうに見る右腕の元に、背番号1が駆けていく。「任せてください」。2年生右腕の中森が、優しく声をかけた。
明石商にとって誤算の継投だった。先発は、昨秋にこの後輩と二枚看板を担った宮口。右手中指を負傷した影響で制球難に陥っていたが、狭間(はざま)監督は前日に復調の兆しを感じていた。2回戦に勝てば準々決勝は連戦。1回戦で完投した中森をできるだけ温存したい――。そんな思惑は宮口の痛みの再発により、崩れた。
1死一、二塁での救援登板。そこで、エースの強心臓ぶりが光る。「深く考えていなかった。バッテリーが慌てたら、みんながばたつくので」。丁寧にコースをついて、大分の代打・牧から三振を奪う。捕手の水上が二塁走者を刺してピンチを切り抜けると、三回以降はすいすいと投げた。四回には自己最速の147キロを記録した。
「中森はテンポがいいから、守りやすい」と水上。無失点で抑える間に、攻守でリズムを取り戻した。七回までにリードは8点に。八回以降は、昨秋の公式戦で登板がなかった3年生の溝尾、杉戸、南がマウンドへ。八回に3失点したが、逃げ切った。
初出場で8強入りした2016年の春、甲子園で投げたのは右腕の吉高1人だけだった。今大会は5人。「最後まで戦っていく上で、総力戦になるので」と中森は言う。エースの好救援があったからこそできた起用。八、九回に投げた3人の3年生が経験を生かせれば、明石商はますます面白い存在になる。(小俣勇貴)