東芝は11日、撤退を決めている米国での液化天然ガス(LNG)事業の売却が、白紙になる可能性が生じたと発表した。売却先の中国のガス会社「ENNエコロジカルホールディングス」から、売買契約を解除する意向を10日夜に伝えられたという。最大1兆円近い損失が見込まれる事業のため、売れなくなれば、経営再建計画に悪影響が出るおそれがある。
東芝は昨年11月に発表した経営再建計画で、事業からの撤退を明記。昨秋にENNに約930億円を払って引き取ってもらう売買契約を結んでいた。今年3月末までに売却手続きを終える予定だったが、必要な米国の対米外国投資委員会(CFIUS)の承認や中国の国家外貨管理局(SAFE)の認可を、まだ得られていない。ENNは契約解除の理由として、これらの手続きの早期の完了が見込めないことを挙げているという。
東芝は「契約解除に必要な書面が届いていない」(広報)とし、ENNの意向を再確認する考えだ。米LNG事業から撤退する方針は変えず、この売買契約が白紙になれば、別の売却先さがしを余儀なくされる見通しだ。より不利な条件での売買契約を迫られる可能性もある。(内藤尚志)