毎年1月に米デトロイトで開かれてきた北米国際自動車ショー(デトロイトショー)が地盤沈下している。世界有数の自動車ショーだが、自動車の電動化やIT化で、各メーカーは直前にラスベガスである家電・技術ショー「CES」で新技術を発表するようになったためだ。お株を奪われた形のデトロイトショーは、来年から6月に開催時期をずらし巻き返す。
14日のデトロイトショーでは、トヨタ自動車が17年ぶりに復活させたスポーツカー「スープラ」が話題を集めた。ただ、他に目立った新車はなく、期間中に発表される車は約30車種と前年の半分以下だ。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディの独3大高級車ブランドは出展しなかった。
米自動車産業の中心地で開かれるデトロイトショーはかつて、「各社がその時点で最高のデザインや技術を披露し合う場」(米自動車アナリストのジェシカ・キャルドウェル氏)だった。トヨタが高級車ブランド「レクサス」をデビューさせたのも1989年のこのショーだった。
ただ、自動車産業の技術開発は、自動運転やネットとつながる「コネクテッドカー」、より幅広い移動サービスなどに重心が移った。自動車メーカーはデトロイトショーの1週間ほど前にあるCESを優先するようになった。
米国内ではほかにも、ニューヨーク(開催は毎年春)やロサンゼルス(同11月ごろ)での大規模な自動車ショーがある。いずれも大消費地でメーカーには重要な位置付けだが、デトロイトは消費者から距離があり、存在意義が揺らいでいる。
ショーの主催団体は昨年7月、開催時期を2020年から夏に移すと発表。厳冬期の開催を避け、会場も市内全体に広げる。参加者が屋外で新型車を試乗でき、自動運転技術の路上体験もできる。さらに、CESと期間を離す狙いもあるとみられる。
自動車アナリストのミシェル・クレブス氏は「各社は新車発表の場として自動車ショーの費用対効果を厳しく見極めるようになった。デトロイトの決断は、自動車ショーを再定義しようという試みだ」と話す。(デトロイト=江渕崇)