高校野球の春季近畿地区大会は26日、1回戦が奈良・佐藤薬品スタジアムであり、夏の全国選手権出場6回を数える郡山(奈良2位)が、激戦区を制した大商大(大阪1位)に10―7で競り勝ち、準決勝進出を決めた。
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両チーム計26安打の打撃戦。「無欲」の強みがある郡山が上回った。そう印象づける場面が、5点リードの六回にあった。
特大の飛球が左翼ポールの左側にそれ、場外の林の中に消えた。もう少しで本塁打という惜しい打球。普通なら悔しくて仕方ないが、郡山の3番・土井翔太(2年)は一喜一憂しなかった。次の球を再びバットの芯でとらえ、左翼席へ運んだ。
チームの合言葉は「淡々と」。それを体現するような打ち直しだった。
土井はチームカラーを「打撃」と言い切る。ただ、「私立と力の差を埋めようとしても、練習量の違いもあって難しい」とも感じていた。
転機が訪れたのは、4月。生島秀峰監督が就任し、初球からきっちりとらえるよう徹底された。それがチームに浸透した。一球もおろそかにしない習慣が身につき、甘い球はどんなカウントでも強振できるようになった。この春の奈良県大会では計7本塁打。打力で勝ち上がった。
郡山は、京大をはじめ、国公立大の合格者を多く出す公立の進学校。全国選手権への出場回数も、奈良勢では、天理、智弁学園に続く3番目に多い。だが、近年は私学の強豪校に押され、2000年を最後に甲子園から遠ざかっている。
その後、夏の奈良大会を制覇した公立校は、13年の桜井だけ。久々の甲子園出場に期待も高まるが、浮つくことはない。4安打を放った土井はさらりと言う。「欲張らず、自分たちの力を100%、きっちり出すことを意識してきた」「開催県だから2位校も近畿に出られた。いい経験を積みたい」。欲をかかず、淡々と力を試す。(小俣勇貴)