【ソウル=小倉健太郎】304人が死亡、行方不明となった韓国の旅客船セウォル号沈没事故で、乗客を救助せずに脱出したとして殺人罪などに問われた船長、イ・ジュンソク被告(69)らに対する控訴審判決公判が28日、光州高裁であった。同高裁はイ被告に殺人罪を適用、無期懲役を言い渡した。
一審・光州地裁判決は、イ被告に遺棄致死罪などを適用し、懲役36年としていた。検察側は控訴審でも一審に続き、死刑を求刑していた。
一審判決は、船長が乗組員に対し、乗客の脱出命令を出すよう指示していたとして「乗客が死亡するのを容認したとみなすのは難しい」と判断し、殺人罪は適用しなかった。
これに対し、控訴審判決は、船長が逃げる前に乗客に脱出を命じる放送をする努力をしなかったと判断、乗客が死んでも構わないという「未必の故意」があったとして殺人罪を適用した。
セウォル号は2014年4月16日、修学旅行の高校生ら乗員乗客476人を乗せて韓国北西部の仁川から南部の済州島に向かう途中で沈没した。検察は過積載や操縦ミスなどが重なって事故につながったとして船長らを起訴した。
同事故をめぐり、韓国国内では事故の構造的原因などを調べる「特別調査委員会」の設置を決めたが、人選などを巡り政府と遺族らが対立。選任された同委員会の李錫兌(イ・ソクテ)委員長は27日の記者会見で「調査の独立性が確保されていない」などと政府を批判した。