諫早湾干拓(長崎県)の堤防排水門の開門を強制しないよう国が求めた訴訟の控訴審で、和解協議が10日に福岡高裁であった。開門を求める漁業者側は、開門せずに有明海再生の基金を設けるとした高裁の和解案に反発し欠席。協議に参加した国側によると、高裁は協議を打ち切らず、続ける考えを示した。
国側の説明では、高裁は協議の継続を求める有明海沿岸の漁業団体や自治体の意見を踏まえ、引き続き基金案に沿った和解を目指す方針を国側に伝えた。漁業団体や自治体は訴訟の当事者ではないが、農林水産省の横井績・農地資源課長は「漁業団体は基金案(で実施する有明海再生事業)の運営管理を担い、有明海再生にも関わる。裁判所は主たる関係者ととらえたと思う」と説明。漁業者側の欠席については「大変残念。高裁の判断を重く受け止めてほしい」と述べた。
漁業者側の弁護団は、3月に高裁に出した文書で基金案を拒否し、開門についての議論もするよう要望している。堀良一弁護士は10日、取材に「一方的な押しつけだ。基金案(による事業)は開門に関係なく実施すべきだ」と話した。
高裁は協議を5月に2回開く予定だが、双方の溝は深く、実質的な話し合いが始まる見通しは立たない。高裁は判決期日を7月30日に指定している。(小川直樹)