2日の東京市場で円相場が7日続落し、一時1ドル=125円台と12年半ぶりの円安水準を付けた。日経平均株価は反落して連続上昇記録は12日間で止まったが、最近の日本の株高は先進国で突出する。米景気の回復を起点に円安が進んだことで日本企業の稼ぐ力に海外投資家の関心が向かっており、円安・株高が連鎖する構図になっている。
「円安にはプラス・マイナス両面があるが、120円前後の水準というのは日本経済全体にとってはプラスの面が大きい」。経団連の榊原定征会長は2日の定時総会後の記者会見でこう述べた。
円相場の7日続落は日銀の追加緩和で円が大きく売られた昨年10~11月以来だ。この間の下落幅は4円近くに達し、5月中旬までの119~120円台での膠着相場から一変した。取引量も増え「市場は慌ただしさを増している」(三井住友銀行の呉田真二氏)。
「やはり米景気は強い」(あおぞら銀行の諸我晃氏)との見方が市場を動かしている。1日には製造業の景況感の改善を示す経済指標が発表された。4月まで寒波などで広がった米景気の減速懸念は後退。年内に米国での利上げが始まるとの見方が強まっており、金利上昇が見込まれるドルへ資金が向かっている。
日経平均は13日ぶりに反落したが、終値は2万0543円と前日比の下落幅は26円にとどまった。円安を手掛かりに輸出関連株への買いは根強く、この13日間の上昇幅は1000円近く(5%)に達した。一進一退の欧米株と対照的に独歩高の様相を呈している。
日本株の業績回復期待はもとから欧米よりも大きかった。市場は15年3月期に続き16年3月期も2割程度の増益を見込んでおり「円安が続けば一段の上振れ余地も出てくる」(ニッセイアセットマネジメントの久保功氏)。収益をもとに算出する株価の割高感は米国ほど強まっておらず「海外の長期マネーを集めている」(BNPパリバ証券の丸山俊氏)。
円安・日本株高は海外ヘッジファンドの目に留まり始めている。「5月の欧州金利の上昇を機に『円売り・日本株買い』に転じている」(為替ディーラー)。円は先週以降、対ユーロでも下落している。
日銀の黒田東彦総裁は2日、安倍晋三首相との昼食後、記者団に「為替はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映して安定的に推移するのが望ましい」という決まり文句を繰り返した。
海外当局からも目立った円安けん制発言はない。市場では「米国株の大幅調整といった変化がない限り、円安・日本株高の基調は当面崩れない」(HSBCの花生浩介氏)との見方が優勢だ。