東海大2年大野睦(りく)さんが亡くなったアパート前で手を合わせる東海大生ら=16日午前7時28分、熊本県南阿蘇村河陽、金子淳撮影
熊本などでの一連の地震は16日、2回目の震度7を観測した本震から1カ月を迎えた。多数の家屋が倒壊し、阿蘇大橋が崩落するなど甚大な被害に見舞われた熊本県の阿蘇地方では、今も多くの住民が避難所に身を寄せる。役場や被災現場ではこの日、犠牲者を悼んで祈りを捧げ、花を手向ける姿が見られた。
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熊本地震 災害時の生活情報
本震による家屋倒壊や土砂災害で計15人が亡くなった南阿蘇村では16日午前8時、防災行政無線のサイレンが村中に響き、避難所の住民や職員らが犠牲者を悼んで1分間、黙禱(もくとう)した。
役場の災害対策本部では、市原一生副村長ら村職員と応援で派遣されている熊本県などの職員約50人が静かに頭を下げた。長野敏也村長は被災現場で黙禱したという。
市原副村長は派遣の自衛隊や全国の自治体に感謝の言葉を述べたうえで、「夢にも見なかった生活が続いた。1カ月が経ち、仮設住宅の準備など、それなりにレールが敷かれつつある。村民に立ち直ってもらえるよう、これからも全力で頑張る」と、復旧・復興に向け決意を新たにした。
東海大学の学生3人が死亡した南阿蘇村黒川地区では午前7時半前から、学生や教授らが現場に足を運び、手を合わせた。
降り出した雨の中、下宿「新栄荘」を経営する竹原満博さん(55)、伊都子さん(55)夫妻と東海大生約10人が、亡くなった大野睦(りく)さんのアパートを初めてそろって訪れた。
花束と、大野さんが好きだった缶ビールを供えた。学生の中には同じフットサルサークルの仲間もおり、目頭を押さえたり涙をぬぐったりする姿も見られた。
5年の原田健汰さん(22)は「亡くなった人もいて、住むところもなくなって、課題はたくさんある。でも、引きずるのではなく、明るく前向きに進んでいきたい」と話した。
亡くなった清田啓介さん(18)の授業を担当していた農学部の教授(51)も手を合わせた。「学生の思いを背負って、残された者でなるべく早く学べる環境を作ってあげたい」と話し、大学内の片付けに向かった。