3万年前の航海実験の草舟がお披露目され、こぐ人々が乗り、記念撮影が行われた=11日午後3時21分、沖縄・与那国島のカタブル浜、吉本美奈子撮影
約3万年前に人類が沖縄に渡ってきた航海の再現実験を企画する国立科学博物館などのチームが11日、実験に使う草舟を沖縄県与那国島で公開した。天候状況をみながら、13日以降に同島を出航し、約75キロ離れた西表島を目指す。
タイムライン:3万年前の航海、再現への道のり
特集:3万年前の航海再現プロジェクト
草舟は長さ6・4メートル、幅1・3メートル、高さ75センチほどの2隻。当時の舟は発見されておらず、どんな舟だったのかわかっていない。チームはオノが要らない草舟が使われた可能性が高いとして、与那国島に自生するヒメガマをトウツルモドキで束ねて作り上げた。
各舟に7人が乗り、木製の櫂(かい)でこぐ。櫂は縄文時代の遺跡から出土したものを参考に作った。蛇行しながら90キロの行程を30時間以上かけて進むと想定している。安全のため伴走船はあるが、こぎ手らが太陽や星で位置を確認しながら進み、食料と水は原則あらかじめ舟に載せ、補給はしないという。
こぎ手の中心メンバーは島に住む人たち。草舟作りから参加する与那国島の入慶田本竜清(いりけだもとりゅうせい)さん(33)は「3万年前はどういう知識や道具があったのか、考えながら舟を作った。愛着がある」と話す。
今回のルートは、現生人類のホモ・サピエンスが南方から北上し、琉球諸島へ渡った沖縄ルートの一部とみられている。「海を渡った手段の有力な候補として、草舟での航海を実際に試す」と、リーダーの国立科学博物館の海部陽介・人類史研究グループ長は話した。
沖縄ルートでは、人類が3万年以上前に、ユーラシア大陸とつながっていた台湾付近から琉球諸島へ渡ってきたと考えられている。当時の地球は氷期で、付近の海面は今より50~60メートル低かったが、琉球諸島は島になっていたとみられる。台湾から与那国島と、与那国島から西表島への距離は、現在と大差はなかったとされる。
一方、西表島は石垣島と陸続きで同じ島だった。石垣島では、旧石器時代の人骨十数体が発掘され、DNA解析で東南アジアや中国南部の遺伝子型と共通することが判明している。(神田明美)