血液製剤を不正製造し、厚生労働省の要請で他企業への事業譲渡を交渉していた化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)が5日、譲渡は難しいとして存続を目指す方針を厚労省に伝えたことが、関係者への取材でわかった。厚労省はその方針を認めず、今後も譲渡交渉は続くが、医薬品の流通に混乱が広がる恐れもある。
化血研は不正製造を隠蔽(いんぺい)するために国の査察に偽造書類を示すなどし、今年1月に医薬品医療機器法に基づく過去最長110日間の業務停止処分を受けた。「化血研は本来、製造許可取り消しが相当」(塩崎恭久厚労相)として、厚労省が組織の抜本的な見直しを求めたため、化血研はアステラス製薬(東京)への事業譲渡を交渉していた。
関係者によると、化血研は事業譲渡について、「交渉先が厚労省に指定され譲渡価格などで公正な交渉ができない」「患者が少ない製剤やテロに備えた天然痘ワクチンなど公共性の高い製剤供給が続く保証はない」などと疑問視。アステラス、厚労省の担当者が集まった場で5日、「現在の状況下では譲渡は難しい」とし存続を検討する考えを伝えた。厚労省には製薬企業の合併などを命じる法的権限はないが、同省幹部がその場で事業譲渡を化血研に改めて求めたという。
化血研のインフルエンザワクチンは国内シェア3割を占める。